無駄な離職を減らすために 〜社内ブランディングの取組み〜

現在日本は、企業レベルでの景気は非常に良く、人手不足感が高まっています。厚生労働省が発表している2017年12月の有効求人倍率は1.59倍と、1947年以来の高水準となっていることがそれを証明しています。しかしながら一方で、同省が発表している雇用動向調査によれば、転職率(労働者に占める転職者の割合)は男女平均で約10%と、ずっと横ばいの状況が続いています。つまりこれは、社員が離職した後の空席を、なかなか採用で埋められない状況が増加していることが予想されます。

こうした状況にあって、無駄な離職(=本来離職して欲しくない社員の離職)を減らすための取組みが従来以上に重要になってきていることは言うまでもないことです。無駄な離職を減らすためには、人事制度の整備やリーダー・マネージャー育成を始め、また何より会社業績の向上を社員に示すといったことも含めた、総合的な取組みが必要となりますが、そうした打ち手の一つとして、本日は「社内ブランディング」の取組みについて、その概要をご紹介したいと思います。

 

1)社内ブランディングとは
社内ブランディングとは、インナーブランディングや、インターナルブランディングとも言い、企業がそのブランド価値についての啓発活動を社内、つまり社員を対象にして行うことを言います。「そんなこといちいちせんでも、社員なら自社のブランド価値について分かっているに決まっている、いや分かっていなかったとしたらけしからん!」と思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、それは勝手な思い込みであり、日常の業務の中で「会社の価値・ブランド」や「当社で働く価値」について考えている社員の方は決して多くないというのが通常です。

 

2)なぜ社内ブランディングが無駄な離職を減らすことに繋がるのか?
ではなぜ社内ブランディングが無駄な離職を減らすことに効果があるのでしょうか? それは社内ブランディングを行うことで、社員が会社の価値を再認識するからです。人は価値がると思ったものを大切にするものです。そしてその価値ある会社に属し、会社の価値の一部を自身が生み出していることを認識することで、個々の社員が、会社への愛着を感じ、その構成員であることに誇りを感じる、つまり社員の会社に対するエンゲージメント(貢献意欲)やロイヤリティ(愛着度)が醸成されることで、無駄な離職が減っていくことになります。

 

3)社内ブランディングの取組み
では社内ブランディングの取組みとはどのようなことをするのでしょうか?標準的には、以下の3つのステップで進めることとなります。

ステップ1:
まず始めに行うのは、自社の価値を明確にすることです。その際重要なことは、価値は新たに作り出すものではなく、「既にあるものを発見する」行為ということです。また、できればそうした価値の発見は、役員だけで行うのではなく、広く社員の方(実際にはセレクトされた)が参加できる場を設定して行うのが良いと考えます。そうした工程を経ること自体に社員のエンゲージメントやロイヤリティを高める効果があります。

ステップ2:
次に行うのは、明確になった自社の価値を更に磨いた上で、それを社員全員が共有することです。共有するに当たっては、イントラネットに専用のサイトを開設したり、社内報や冊子を作成したりすることも有効です。また社外への広告や発信を社内ブランディングに繋げることもあります。社員に社外への広告に出演してもらうことなどは、社内ブランディングに繋がる施策であると言えます。更にもっと身近な方法としては、ステップ1の自社の価値発見の場に参加したメンバーが、その発見の過程も含めて、社内の他者に物語る(伝道する)ことが、価値の浸透に大変有効な方法になると言えます。「先生が一番学ぶ」ことになるとともに、聞き手にとって物語りとして語られたことは深く頭と心に刻まれる傾向があるからです。

ステップ3:
ステップ3は、ステップ1と2をベースとして、自社の価値の更なる向上と、その浸透に繋がる取組みを継続的に行うことです。言わずもがなですが、一度自社の価値を纏めて、社内にシェアして終わりではないということです。例えば毎年自社の価値について社員同士が語る週間を設けたり、社員意識調査を実施して、そこで自社の価値についての社員の認識度をチェックして、結果に基づくアクションプランを実践するなどが挙げられます。社内ブランディングを「ブランディング」と「ing」を付けて言うのは、それが「継続的な活動」であるからと言えます。

 

本日は「無駄な離職を減らす」ための取組みの一つとして「社内ブランディング」の概要をご紹介させていただきました。シナジー&エフェクトでは、人事とコミュニケーションの両事業のシナジーを発揮して「社内ブランディング」の取組みを展開いたします。関心のある方は是非ご連絡ください。

 

2018年2月28日
シナジー&エフェクト
人事・人材開発事業担当代表

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