「ワーク・ライフ・バランス」について考える

本日は「ワーク・ライフ・バランス」についてです。

「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」は、今や企業の人事・労務に関連する重要ワードとして、ネットやテレビ、新聞等で見ない、聞かない日はありません。過去私のBLOGでも「働き方改革」について解説していますが(「今更ですが『働き方改革』とは?」参照)、今回は働き方改革の一環でもある「ワーク・ライフ・バランス」について考えてみたいと思います。

1)「ワーク・ライフ・バランス」とは?

まず、そもそも「ワーク・ライフ・バランス」とは何でしょうか?
内閣府の『仕事と生活の調和』推進サイト」では、以下の通り定義しています。少し長いですが、内閣府のHPから引用します。

***********以下引用*************

仕事と生活の調和が実現した社会は、
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
とされ、具体的には、

(1)就労による経済的自立が可能な社会経済的自立を必要とする者、とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

(2)健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

(3)多様な働き方・生き方が選択できる社会性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

また、各種文献では、以下のとおりとなっています。

◎老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態である。
~「「ワーク・ライフ・バランス」推進の基本的方向報告」
(平成19年7月 男女共同参画会議 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会)個人が仕事上の

◎責任を果たしつつ、結婚や育児をはじめとする家族形成のほか、介護やキャリア形成、地域活動への参加等、個人や多様なライフスタイルの家族がライフステージに応じた希望を実現できるようにすることである。
~「「子供と家族を応援する日本」重点戦略検討会議各分科会における「議論の整理」及びこれを踏まえた「重点戦略策定に向けての基本的考え方」について(中間報告)」
(平成19年6月 「子供と家族を応援する日本」重点戦略検討会議)

◎多様な働き方が確保されることによって、個人のライフスタイルやライフサイクルに合わせた働き方の選択が可能となり、性や年齢にかかわらず仕事と生活との調和を図ることができるようになる。男性も育児・介護・家事や地域活動、さらには自己啓発のための時間を確保できるようになり、女性については、仕事と結婚・出産・育児との両立が可能になる。
~「労働市場改革専門調査会第一次報告」
(平成19年4月 経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会)

◎働く人が仕事上の責任を果たそうとすると、仕事以外の生活でやりたいことや、やらなければならないことに取り組めなくなるのではなく、両者を実現できる状態のことです。
~「男性も育児参加できるワーク・ライフ・バランス企業へ-これからの時代の企業経営-」
(平成18年10月 厚生労働省 男性が育児参加できるワーク・ライフ・バランス推進協議会)

***********以上引用*************

上記の定義から分かるのは、「ワーク・ライフ・バランス」が、「仕事上の責任を果たしつつも、働く人の多様なライフステージに応じて、個々人の希望をより実現できるようにしましょう。」ということで、従来型人事管理の基本であった、集団的、画一的な管理とは一線を画す考え方に基づいているということです。

つまり、一律に退社時間を決めて、残業規制をするといった措置は、「ワーク・ライフ・バランス」の実現を目的とした取り組みとしては少々的外れであると言わざるを得ず、一部企業で実施されているこうした施策に違和感を感じるのは、そうした本来的な「ワーク・ライフ・バランス」の趣旨・あり方と、具体的施策のギャップに原因があると考えられます。本来的な「ワーク・ライフ・バランス」の趣旨に則れば、人によってはワークとライフのバランスが「7:3」の人がいても良いし、「3:7」の人がいても良いということになります。

2)「ワーク・ライフ・バランス」と「働き方改革」の関係とその効果

では「ワーク・ライフ・バランス」と「働き方改革」の関係はどのようになるのでしょうか? 「働き方改革」の説明は過去のBLOGに譲りますが、結論からしますと、「働き方改革」を実施した結果として「ワーク・ライフ・バランス」が実現する、という関係になります。つまり、「ワーク・ライフ・バランス」とは様々な取り組みの結果として得られるものであり、また、「これが『ワーク・ライフ・バランス』(の取組み)です。」といった固有の制度や仕組みがあるのとは異なり、実際としては、「個々人のライフステージに合った柔軟な働き方のための(形だけでなく、実際に使える)選択肢を整備すること」になると考えられます。そうした選択肢が用意された職場は「働く人にとって優しく、働き易い職場」と考えられ、更にその結果として、離職率が低下するなどの効果が期待できると言えます。

3)「ワーク・ライフ・バランス」の実現は業績を向上させるか?

「ワーク・ライフ・バランス」の取り組みの期待効果として、業績の向上を挙げる企業は少なくないと思いますが、実際の所、この因果関係を証明するのは非常に難しいと考えます。しかしながら、「ワーク・ライフ・バランス」の為の制度や仕組みが整った職場は、働き易い職場であることが考えられ、離職率も低くなったり、人材確保で有利になる可能性があることを考えますと、ある程度業績にも良い影響があることは予想に難くありません。しかしながら、そうした環境を整備するためには、増員をしたり、ITインフラを整備をしたりと、投資を行う必要が出て来る可能性があることも忘れてはいけません。

また、「ワーク・ライフ・バランス」の為の取り組みが、従業員の業績向上への意欲=モチベーションに繋がるか?というと、必ずしも繋がらないと考えられます。(モチベーションについてはBLOG「社員のモチベーションをアップさせるには?」参照)何故ならば、「ワーク・ライフ・バランス」はその性質上、福利厚生などのように、それがないと従業員の不満足を強化する要因、つまり「衛生要因」になると考えられるからです。「ワーク・ライフ・バランス」実現のための制度や仕組みを検討する場合は、そうした視点をもって取り組むことが有効であると考えます。

少子高齢化、労働人口の減少に伴う、高齢者や女性の更なる社会活動への参画といった社会的な要請はもちろん、時代が進化し、個々人が、それぞれにとってより幸せと感じる生き方や働き方を求めて積極的に活動する現代において、「ワーク・ライフ・バランス」実現のための取り組みは、好むと好まざるに関わらず、企業が取り組むべき課題であると考えます。そしてその際重要なのは、バランスポイントは人によって異なるという事実であり、よって(繰り返しになってしまいますが)、具体的な取り組みは、柔軟に働くことができる選択肢を準備することになると考えられます。

本日は「ワーク・ライフ・バランス」についてでした。
猛暑が続きます。皆様くれぐれもご自愛ください。

2018年7月23日
シナジー&エフェクト代表 笹谷

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