内定辞退にどう対応するか?(2)

本日は「内定辞退にどう対応するか(2)」です。

大分間隔が空いてしまいましたが、前回の内定辞退にどう対応するか(1)の内容を受け、今回は「内定辞退が実際に出た場合の対応」についてです。具体的には、内定事態が発生した時は、折れそうになる心をグッとこらえて引き留めを行う訳ですが、その際の「心構えや態度」そして、「引き留め成功の確率を高める方法」について述べたいと思います。

 

1)内定辞退が発生した際の心構え、態度

これは殊更に説明する必要はないかもしれませんが、基本となるのは「誠実さ」と「情熱」をもって内定辞退者に対応するということです。「当社が第一志望と言っておきながら内定を辞退するとはけしからん!」「当社に入社しないのであればもう関係はない。」ということで、ぞんざいな対応をするというのは、決してやってはいけないことです。将来もしかしたら、その辞退者が顧客やパートナーとなる可能性もありますし、今の時代、問題ある対応をすれば、SNSで情報は拡散し、会社のブランドを著しく傷つけてしまうことにもなりかねません。むしろ、今後、別の道を進む可能性が高い内定辞退者にこそ、一期一会の誠意をもって対応することが、次に繋がることになると考えます。

また内定辞退者との電話や対面での面談の際に気をつけていただきたいのは、内定辞退者が入社したいと考えている会社について否定的な発言をしないということです。ついつい当社に来て欲しい、自社の方が優れていることをアピールしたい意図で、その会社のことについて否定的なことを言ってしまいがちですが、それは却って自社の評価を落とすことになると考えた方が良いでしょう。なぜなら、その会社について否定的な発言をすることは、その会社を選択しようとしている(選択した)内定辞退者自身の考えを否定することとイコールになってしまう可能性があるからです。もしその会社について触れるとすれば、「○○さん(=その会社名)も素晴らしい会社だと思うけど、当社にはその会社に負けないくらい素晴らしいところがあるんだよ」と、その会社をリスペクトした上で、当社が更に優れていることをPRするのが良いでしょう。

 

2)引き留め成功の確率を高める方法

引き留めを成功させる確率を高めるためにまず必要なのは「誠実さ」「情熱」です。これらがなくてはどんなに理屈を尽くしても、既に他社に入社したいと考えている内定辞退者を翻意させることは難しいことは言うまでもありません。しかしながら逆に「誠実さ」と「情熱」だけというもの十分ではありません。そこに「理屈」をプラスすることで引き留め成功の確率は少なからず高まるものと考えます。

①内定辞退の「真の理由」を把握する

まず行うのは、内定辞退者の決意の程を見極めることと、内定辞退の「真の理由」を把握することです。特に後者については難しいケースがあると考えますが、前回の内定辞退にどう対応するか(1)でご紹介したように、採用候補者の会社選択因子の把握を選考段階から行っていれば、「真の理由」はほぼ正確に把握できるものと思います。なおここで「真の理由」と記載しているのは、内定者が辞退を表明した際に付してきた理由は、「真の理由」ではない場合があるからです。ここは採用担当者とともに、選考段階の状況も良く踏まえて、「真の理由」を見極める必要があります。そして、把握した「真の理由」に関して、その候補者が入社したいと考えている会社と自社との差が何で、どの程度のものかを把握することによって、そこにインパクトのある具体的な対策を考え実行することができるようになります。

なお、もし把握された理由に対して、自社としては全く手も足も出せない場合は、残念ながら引き留めは非常に厳しいものとなってしまいますが、その場合、把握された内定辞退の要因とは直接結びつかない、他の会社選択因子を把握できていれば、それらの因子にアプローチして引き留めを行うことができると考えます。

②引き留め策はオーダーメイドで考える

内定辞退の「真の理由」が把握できれば、対応策は色々と考えることができると思います。そしてこの対応策は辞退理由により個々に異なりますので、一概にこうすれば良いというものがある訳ではありません。多くの場合は内定辞退者との電話や対面での面談を設定し(現実的にはそうした場面設定すら難しい場合もあるかもしれませんが、その時はどうにも仕方がありません)、内定辞退の理由を踏まえての自社のアピールを行ったり、リクルーターとの面談を設定したりすると考えられます。しかしここで重要なのは、その際の説明や、その他の対応内容は、個々に「オーダーメイド」で考えるということです。

特定の人だけに特別な対応、つまりオーダーメイドの対応を行うのは、他の内定者のことを考慮して不公平という考えをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、よほどブランド力のある会社であれば別ですが、それでは満足な引き留めは行えないと考えます。むしろいかに「オーダーメイドのアプローチ」ができるのかが勝負と考えるところです。

ここで大変示唆に富むエピソードをご紹介します。有名なエピソードですのでご存知の方も多いと思いますが、日本ハムファイターズの栗山監督が、大谷翔平選手を獲得した際のアプローチについてです。大谷選手は高校卒業時にはメジャーに挑戦する意志を既に固め、当初は日本ハムファイターズの入団交渉を受け入れない、つまり内定辞退にも似た状況があったと理解しています。(むしろもっと厳しい状況ではなかったかと)しかし、栗山監督の誠実で情熱ある姿勢・態度と、「オーダーメイドのアプローチ」によって、大谷選手は最終的に日本ハム入団を決意したのです。ここでは詳しくは触れませんが、そのアプローチは、概ね以下のような内容であったとのことです。

①メジャー挑戦の意志の尊重
②二刀流での育成プラン
③人間教育重視の方針
④ご両親への誠実なアプローチ

「そりゃ大谷選手に対してなら。。」と言ったお声が聞こえて来そうですが、私は、具体的な内容はどうあれ、こうした姿勢・態度そしてアプローチの要素は、全ての人材(タレント)の獲得や引き留めの際に必要とされるものであろうと考えています。つまり、内定辞退者の引き留めには「誠実さ」「情熱」そして、「オーダーメイドのアプローチ」が有効であることを、このエピソードは教えてくれていると考えます。

また最後に少し追加すると、大谷選手の例でも分かる通り、こうしたオーダーメイドのアプローチは、決して金銭的なものだけではないということです。ポイントとなるのはむしろ非金銭的な要素にあると言えるでしょう。(もちろん金銭面があまりにも低い場合は別ですが)

本日は以上です。

 

2018年5月30日
シナジー&エフェクト
人事・人材開発事業担当代表

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