人事制度の中核(1)

本日は「人事制度の中核」についてです。

私は人事・人材開発、組織開発コンサルタントとして、企業における人事制度の構築や、見直しのお手伝いをしています。その際、経営者の皆様と人事制度についての話をさせていただくのですが、幅も広く専門的な内容も含みますので、その場だけの話ではなかなか理解し難い部分もあると考えています。そこで今後、補足説明の意味も込めまして、本ブログでも人事・人材開発、組織開発に関する「基礎的な知識や考え方」について、人事が専門でない皆様にも分かり易いかたちで、少しずつ解説をして行きたいと思います。本日は「人事制度の中核」についてです。

 

1)人事制度の中核となる制度とは?

質問です。「人事制度」というと様々な制度が思い浮かぶと思いますが、その「中核」として位置付けられる制度は何でしょうか?(3つあります) 狭義の人事制度とも言えるものです。

早速答えとなりますが、それは、、

 

「等級制度」「報酬制度」「評価制度」の3制度のこととなります。

 

昨今IT系の会社を中心にユニークな人事制度を導入する例が増えているように思いますが、やはり人事制度の中核であり、基礎となるのはこの3制度であり、海外企業でも同じです。そして家でも基礎がしっかりしていれば大きな地震でも倒れないように、人事制度もこの3制度がしっかりしていることが、事業の成長と発展にとって大変重要な要素となります。

2)等級制度とは

そして前記の3制度の中でも、人事制度の構築や見直しの際に、最初に手をつけるのが「等級制度(資格制度)」です。よって本日は特に「等級制度」にフォーカスしますが、「等級制度」とは、「能力、職務、役割等に着目して等級(資格)を設定し、社員の社内での位置付けを定める仕組みのこと」であり、「等級制度」に基づき、「報酬制度」や「評価制度」を設計・整備していくこととなります。

ちなみに、この等級が主に「社員の能力」をベースに設定されている制度を、「職能等級制度(職能資格制度)」、主に「職務」をベースに設定されている制度を「職務等級制度(職務資格制度)」と言いますが、前者の「職能等級制度」は日本独特の制度で、後者の「職務等級制度」は外資系企業で用いられている制度となります。近年では日本企業の中にも職務ベースの制度に移行する企業が増えていますが、日系企業では完全な「職務等級制度」ではなく、「職能等級制度」と「職務等級制度」の中間的、ハイブリッドな制度である「役割等級制度」を導入する企業が多くなっています。(恐らく「役割等級制度」が日本では次のデファクトになると考えます)

 

3)等級制度整備のメリット

等級制度をきちんと定めるメリットは計り知れません。等級制度を設計する際には、職能ベース、職務ベース、はたまた役割ベースいずれで制度構築かを様々な観点から検討して定め、更に「管理職コース」や「専門職コース」などの「キャリアコース」を設定した上で、階層、つまり等級を設定していくこととなりますが、各等級で求められる能力、職務、役割が明確になることで、より納得性の高い評価や、公正な報酬の決定が可能になることは勿論、社員の社内キャリアの方向性とステップが明確になることで、人材育成がより計画的かつ合理的にできるようになります。社員にとっては、自身の将来のキャリアプランを描きやすくなりますので、より安心して働ける環境を提供することにもなると言えます。つまり、人材開発の基礎作りになるということです。

また、等級制度をきちんと定めることは採用力の強化にもなります。新卒採用にしろキャリア採用にしろ、候補者の最大の関心事の一つは、「入社する会社で自身の将来のキャリアがどのようになるのか?」「どういった成長のステージがあるか?」です。そうした候補者に、自社の等級制度、つまりキャリアの方向性やステップについてきちんと説明できる会社と、できない会社があるとしたら、候補者はどちらに入社を決めるでしょうか?答えは明白だと思います。採用についてはまた別の機会に触れますが、人事制度をきちんと整備することが、採用力の強化の王道であると私は考えています。内側から外側へが物事を成功に導く原則です。

そして更に、等級制度も含めた人事制度をきちんと整備することが、社員の皆さんが「Win-Win」や「利他」の考え方に基づく行動ができるようになることにも繋がると言えます。「Win-Win」や「利他」の考え方は、ビジネスや人生を成功に導く鍵であると考えますが、人は自分自身の中に安定感を持たなければ、なかなかそうした考え方を実践できるようにはならないものです。(頭では理解していたとしても) しっかりした人事制度を整備することは、社員の皆さんの会社への信頼感を高め、そしてそれは社員の中に安定感を築くことになり、結果、社内で「Win-Win」や「利他」の考え方に基づく行動が実践されて行くことに繋がると考えます。

 

そうなのです。ここまでお話しして言えることは、人事制度をきちんと整備することは、業績に直結するということです。貴社での状況はいかがでしょうか?
会社の大小は関係ありません。もしまだ未整備であったり、十分な内容でなかったり、また経年の経営環境や労務構成の変化に応じて見直しが必要になっている等があれば、ご相談いただければと思います。

本日は「人事制度の中核(1)」として特に「等級制度」にフォーカスについてお話ししました。続きはまた後日。。引き続き良いGWを!

 

2018年5月4日
シナジー&エフェクト
人事・人材開発事業担当代表

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