強くしなやかなリーダーを育成する(2)

4月から新年度という会社も多いことと思います。新たな期を迎えるに当たって、本日は、「強くしなやかなリーダーを育成する」の第2弾として、「志を持つ(立てる)」です。

私自身この4月より、当社経営への携わり方を変え、受けて当社HPにもプロフィールを掲載しました。その他諸々と対応事項があり、ブログの更新も滞りましたが、今回は、新しいステージを迎えた私自身の状況も踏まえ、このテーマで記載したいと思います。

この時期、入社式などで、「志を持て(立てよ)」「志を高く」といった講話が経営者からされることがありますが、「志を持つ(立てる)」ことは新入社員にだけでなく、強くしなやかなリーダーや、そこに向かう全ての人にとって大変重要なことであり、また必要なことであると思います。しかしながら、「志」は少々抽象的な概念でもあり、またそれが故に、その捉え方にも起因して、「志を持て(立てよ)と言われても難しい。」と告白されるリーダーも少なくないと認識しています。更に言えば、実際会社内で「志」が語られるのは、新入社員の時くらいで、以降職場の上司や同僚、部下と「志」について話をすることはほとんどないのではないでしょうか? これは不思議と言えば不思議な話です。

そこで今回は、 1)そもそも志とは何か?、 2)なぜ志を持つ(立てる)ことが必要なのか? そして、3)志を持つ(立てる)ためには何をすれば良いのか? について可能な限りシンプルに述べたいと思います。(と言っても長文申し訳ございません)

1)そもそも志とは何か?

まず、そもそも「志」とは何なのでしょうか? 
かの吉田松陰先生は、「志を立てて、以って万事の源となす」と言い、志を立てることの重要さを説いています。

「志」を辞書で引きますと「ある事を成し遂げようという気持ち」「ある方向を目指す気持ち」「心に思い決めた目的や目標」等とあり、加えて「志」という字には「厚意・親切」といった意味もあります。(「寸志」の「志」は厚意の意味ですね。)また、英語にすると完全に一致する言葉はないようで、「Ambition=大望・野望」や「Aspiration=希望」等が充てられるようですが、先の日本語とは少々ニュアンスが異なるように思います。

踏まえますと、「志」は「気持ち」や「思い決める」という心のあり方がポイントになりますので、端的に言えば「決意」と言い換えることができると考えますが、先程の「厚意・親切」という意味も考慮しますと、決意したことには、他者を思い遣る「利他」の要素が含まれると考えられることから、総合しますと、「世の中や他者のためになる事を成し遂げようとする決意」と言うことができると思います。なんとも気高く背筋がスッと伸びる感覚を覚えます。

更に、先に「志」に当たる英語として「Ambition」と「Aspiration」を挙げたのですが、「志」を「世の中や他者のためになる事を成し遂げようとする決意」とした場合、「志」とは、むしろMisson=ミッション」(信条・理念)に近い言葉であると考えます。有名な「クレド」は「志・信条・約束」と訳されるようで、まさに解釈が一致します。

2)なぜ志を持つ(立てる)ことが必要なのか?

では、なぜ強くしなやかなリーダーやそこに向かう人には「志」を持つことが必要とされるのでしょうか?
それは、端的に言えば、「志の有無や高さが、その人の成長のレベルを規定してしまう」からです。

「志を持つ(立てる)」とは、「(人生の)目標を設定し、それを達成しようという決意」のこととも言える訳ですから、「志を持たない、志が低い」ということはすなわち「目標を持たない、目標のレベルが低い」ということであり、「志を持つ、志が高い」場合に比べて、成長のレベルが低くなってしまうことは理解できることと思います。強くしなやかなリーダーやそこに向かう人にはより高みに成長してもらう必要があるのです。

また少し言い方を変えますと、「志」を持つことによって、それも成長の一環と言えると思いますが、困難に立ち向かう「勇気」と「忍耐力」が身に付くと言えます。昨今日本人の勇気や忍耐力が衰えてきているとする論調を見ることがありますが、「志」のあり方がその背景にあるように思うところです。

3)志を持つ(立てる)ためには何をすれば良いのか?

それでは、志を持つ(立てる)、また高めるためには何をすれば良いのでしょうか? ここでは以下の3点を挙げたいと思います。

①志を持つ(立てる)ことを決意する

現実的な話として、「志を持つ(立てる)」ことについて明確に意識・決意している人は決して多いとは言えないのではないでしょうか。日常の生活の中で「志」について考えることはそう頻繁あることではないと思いますが、やはり全てのスタートは「志を持つ(立てる)ことを心に決める」ことです。

なお、人によっては「志」と意識せずに志そのものや、その種(たね)を、思いや信念という形で既にお持ちの方もいらっしゃると思います。そうした場合はそれらの思いや信念を「志」として、より明確にして意識することが重要と考えます。

②先ずは高過ぎない志を持ち(立て)、そして変化させる

「志」を持つ(立てる)ことを決意したら、次は実際に、自分の内面に向き合って、自身の「志」について思いを巡らします。最初はなかなか浮かばないかもしれませんが、初めから高すぎる「志」を立てなくて良いですし、抽象的なもので良いと思います。実践と経験を重ねる中で、「志」は変化し、またより具体的なものになって行くことでしょう。大事なのは「志」も変わるということであり、「志を高める」→「実践」→「成長」のプロセスが継続、連続していくことと言えます。

なお、どうにも「志」が浮かばないという方もいらっしゃるかもしれませんが、その場合は「人は必ず死ぬ。人はいつ死ぬか分からない。人生は一度しかなく、短い。この人生で何をするのか?」との質問を自分自身に投げかけてみてください。質問に対して思い浮かぶ事に「志」のヒントが含まれていると思います。

「志」とは多分に人の死生観から影響を受けるもののようです。戦争や、生死に関わるような事故、身近な人の死からのインパクトを起因として「志」を持ったり(授かったり)、「志」が変化した人の話を聞くことがあるのは、それが理由なのでしょう。つまり、「志を持つ(立てる)」ためには、程度の差はあれ、真摯に「死」に向き合い、それを「生」に転換する作業が必要になるものと考えます。

③志を紙に書いて定期的に見る

「志」は紙に書いて、定期的に(毎日でも)見るようにします。記載はどのような方法でも構いませんが、いつでも見ることができる場所に掲示したり、保存したりしておくことが良いでしょう。

さあ、新たな期の始まりです。私は、1年の中で、やはり4月が「志」を立てたり、見直したりする最適な時期と考えています。何故ならば4月は「桜」が咲いて散る時期であり、日本人は古来より、桜に死生観を投影して来たからです。桜をスマホで写真に収めるのも良いですが、桜が散るのを眺めながら、自らの「志」のあり方について考えるというはいかがでしょうか?(今年の桜は既に散ってちまいましたが。。)

 

2018年4月9日
シナジー&エフェクト
人事・人材開発事業担当代表

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